読売新道 後編

ロングトレイル

前編はこちら → つかっちょ野遊び日記 | 読売新道 前編

8月22日(水) 四日目

2:00起床

今日は奥黒部ヒュッテまで。コースタイムで10時間50分。

長時間行動に備えて早めの行動。

キャンプ場ではすでにいくつかのテントには灯りが付いている。

3:40まだ暗闇の中、出発。

雨は降っていないが寒いのでアンダーウェアとレイン上下を着て丁度良い。

満点の星空の下、ヘッドランプの明かりが木道を照らす。

やがて東の空が赤く染まってきた。

5時半 祖父岳山頂でご来光。この瞬間が一番好きな時間だ。

しかしあっという間に終わってしまう。

日が昇るとたちまち気温が上がる。

レイン上下を脱ぎ、日焼け止めを塗る。

昨日歩いたルートを戻りワリモ岳分岐に。

水晶岳へのルートに足を踏み入れる。

さあ!ここからは歩いたことのない道。

未知のルートを歩くときはいつでも不安と期待でドキドキワクワクする。

しかも今日は快晴。 どんな絶景が待っているのか期待のほうが上回る。

水晶小屋から下山してきたと思われるパーティーと数組すれ違う。

やはり多くの人は水晶岳までで、そこから黒部へ向かう読売新道に行く人は少ないんだろうな。

6:20水晶小屋に到着。

雲ノ平小屋や三俣山荘と比べるとこじんまりとした建物。

ここから奥黒部ヒュッテまではコースタイムにして約9時間、小屋も水場もない稜線上に小屋があるだけでも登山者には心強い存在。

デッキからは裏銀座の展望が素晴らしい。

いよいよ現われた「読売新道」の看板。

晴れてはいるが強風の中、水晶岳山頂へ向かう。

7:00水晶岳 2986Mの到着。

ゴツゴツした岩場の山頂はせまく数人しかいられないほど。

ここからの展望は更にすばらしく360度すべてが見渡せる。

槍ヶ岳~穂高岳から表銀座ルート、近くには裏銀座ルートの烏帽子岳 野口五郎岳 これから向かう先には遠く剣岳、黒部湖  昨夜テントを張った雲ノ平と、それを見守るようにそびえる薬師岳の威容。

出発が早かったのでここで朝食。

昨夜のパスタで使ったサバ缶をバゲットにはさんだ簡単サバサンド。

行動食を食べながら展望を楽しんでいたらいつの間にか早そうな人がやってきた。

ボクのように山頂でのんびりすることもなく颯爽と歩き去っていった。

他と比べてメジャーではない読売新道。あまりいないかなと思っていたけど、やはり北アルプスのハイシーズンですね。

8:20温泉沢ノ頭

少し休憩。もみじ饅頭を食べる。

やわらかくて甘い饅頭がウマイ。

ここの標識には

「この下に日本の秘湯の高天原温泉があるよ」

なるほど、ここを下ると有名な高天原温泉(たかまがはらおんせん)。

この沢の名前がズバリ温泉沢というのか。

なかなか行けない山奥の秘湯。

一度は行ってみたいな。

もぐもぐ。

次に目指すは赤牛岳。遠くからみても名前のとおり赤くみえて目立った山だ。

水晶岳といい、赤牛岳といい前々から来てみたかった山、ルートなので気持ちがはやる。

近くに見えるが意外と遠い、アップダウンはなく歩きやすいが陽射しが強すぎて暑い。ときどき頭から水をかける。

やがて、細かい石や砂が中心の道になってきた。赤牛岳山頂はまもなくだ。

10:40赤牛岳 2864M 山頂に到着

今度の標識は

「ルートの確認を。あしもとに注意しながらくだろう。東沢出合まで」

さきほどの温泉沢ノ頭といい、標識のコメントに何かユーモアと愛を感じる。

黒部湖がより近づいてきた。

明日にはあの湖のほとりにいるのだろう。

ここからの道は下り基調。

道は次第に大きな岩場の下りに。

岩場歩きのペースでそのまま狭いハイマツ帯に入った時に

足に硬い枝がひっかかり流血!

これは痛かった~

あまりの暑さにショートパンツにしたけど、山ではやはりロングパンツが基本ですね。

(教訓になった)

樹林帯に入ると、せまく濡れた岩と泥の道は歩きづらい。

今度は濡れた岩で足を滑らせ、木に手をついたら尖った箇所でまた流血!

暑いからと手袋を脱いだのがいけなかった。。。

手の保護の為にも手袋は必携ですね。

(これも教訓!)

あ、先行者がいた。

いいペースで先行者を数人抜いていく。

聞くと皆、水晶小屋から出発したとのこと。

先ほどまでの視界の開けた爽快な尾根歩きと違い、木々に囲まれ風も抜けない樹林帯は暑くて不快。更にせまく濡れた岩と泥の道。

                                           歴史を感じる看板

下りも急で足への負担も大きく肉体的にも精神的にもジワジワと消耗する。何度か足首をひねったり、バランスをくずして転びそうに。落ち着け。落ち着け(汗)

いつの間にか先行者に追いついた。

しかも大勢。あとで聞いたらツアー登山で約20名とのこと。

みなさん読売新道というハードで割とマイナーなところに来るぐらいなのでツアーとはいえ装備や歩き方なども経験豊富なベテランといった感じ。

ムシムシの暑さの中で汗だくになりながら奥黒部ヒュッテに到着。

とりあえずザックを置き、流水で顔を洗い、喉を潤す。

冷たくてウマイ!顔も洗ってスッキリ! 生き返った~

一瞬、裸になって頭から水をかぶりたい欲求にかられたが、ここは人目もある山小屋だということ思い出してガマン。

樹林帯の中に建つ奥黒部ヒュッテ。

水も豊富でトイレもきれいな山小屋だ。

聞くと今日は宿泊者がいっぱいで今年一番の入り。

ツアーの団体やあえてお盆休みをずらしてきた人がたまたま重なったようだ。

「盆と正月が一緒に来たような日」とは小屋の主人の談。

受付をしてから林を抜けたところにあるキャンプ場に。

広々としていて気持ちいい。

また砂地の為、ボクのような薄いマットでも寝心地はよさそうだ。

キャンプ場から少し歩くとそこには黒部川。

夕方には水量が多く、流れが速い。

この小屋にはここでの釣りが目的で泊まっている人やテント泊の人もいた。

早めの夕食はジャコと干し椎茸、ドライトマトのペンネ。

夕方、川から十数匹の岩魚を手に釣りから戻ってきたオジサンから「岩魚、食べるか?」と勧められたが、夕食は済ませた後だったし捌くナイフもないのでありがたいが断った。

釣り人の憧れ、黒部川の岩魚はきっとウマイんだろうな。

明日は、いよいよ黒部ダムに向かう。

そしてそこ「平らの渡し」からは渡し船で対岸に渡らなければならないのだ。

船の本数は少なく1日4~5本。時間も6:20 10:20 12:20~とかなり間隔があいている。

第一便と二便の間には4時間もあるので当初は6:20に乗ろうと思ったが、それに乗るにはここをまだ暗闇の4時には出発しなくてはならない。

ということは朝2時過ぎには起きる必要があるわけで少し躊躇していた。

しかし小屋泊まりしていたツアーのガイドさんとの雑談の中で

「ここから歩いて10~15分後くらいから場所が続くよ。ボクなら暗闇の中ヘッドランプの明かりのみで行動したくないなあ。先日も女性が滑落してケガを負ったしね」

ツアーの人達は10:20に乗るとの事。

よしボクも10:20の便に乗ろう。

ならば明日朝はゆっくりできるぞ。

8月23日(木) 五日目

地面もふかふかで寝心地が良く、寒くも暑くもなかったのでグッスリと眠れた。

最後の朝食はいつもの棒ラーメンに残った具を投入して食べた。

コーヒーも飲んでのんびり準備していたらツアーの人達や周りのテントの人達もいつの間にかいなくなってしまった。

7:20出発

ガイドさんの話通り10~15分後には丸太橋が現れた。

その後も頻繁に丸太の橋、階段が続く。

丸太の間隔も微妙に広いしもし夜露などで濡れていたら滑りそう。

確かに暗闇でこの道は歩きたくないなあ。

しかも結構なアップダウンがある。よくぞこんな道を作ったもんだと感心する。しかもところどころ土砂などで崩れた残骸もあるが、補修された道がしっかりとできている。歩くのには支障がない。

荒れた登山道より余程歩きやすい。

ここを手入れしている人達には感謝。

樹林帯の切れ間からは黒部川が見える。

先行者に追いついた。

昨日のツアーの人達だ。

アドバイスしてくれたガイドさんもいる。

丸太橋で慎重に歩いて来たのだろう。

9:00

黒部ダム湖が近づいてきたら「平らの渡し」に到着。

湖畔にむけて道がある。

ここが乗り場のようだ。すでに10数人並んで座っていた。

10:20の出船までまだ時間がある。

お昼休憩しながら並んでいる人達とおしゃべり。

初めて会った名も知らぬ人達とでもなぜか話が弾む。

街ではなかなかありえないことだが、なぜか「山」だとこれが自然なことなのだ。

独りで黙々と歩くのもよいが、こういう時間も楽しい。

10:15船がやってきた。

居合わせた人の話だと以前は大きい船だったらしいが小さくなったらしい。

ボクも本で見たときにはもう少し大きい船だった。

人数もあまり乗れないらしく乗客は10人ほど。

対岸までは5分程なので折り返し運転をしてくれるとのことで、ボクは第2便で乗ることができた。

山歩きをしてきて湖をクルージングできるなんて贅沢な気分。

しかも関西電力が運営していて無料!

小さな船なので湖面が近く、スピード感がある。

暑い樹林帯を歩いてきたので風が気持ちいい!

登山道の整備といい、船の運営といい関西電力の方々に感謝!

優雅な船旅気分に浸っているとあっ!という間に対岸に到着。

対岸に渡ってらまた登山道が始まる。気温も高く細かなアップダウンの連続。爽快なクルージングを味わった後だけに暑さが堪える。

それにしてもダムの周りを歩くだけなのに長いこと。黒部ダム湖の大きさを身に沁みて実感。 はぁ~キツイ。。。

途中の沢や川で頭や顔に水をかけて冷やす。

水の消費が激しくプラティパスの水量が心許なくなってきたころ、小屋が見えた。

12:55ロッジくろよん到着。もうすぐだ。

ダムに近づくと家族連れ、外国人などの観光客が目立ち始めた。

ようやく黒部アルペンルートに到着。

相変わらず黒部ダムにはたくさんの観光客。

満員のトロリーバスに乗り長野県の扇沢駅に到着。

疲れたけど楽しい4泊5日の山旅。天候にも恵まれ今回も無事に下山できた。

どっぷり山に浸かれた5日間だったな。

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